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【三橋貴明 緊急寄稿③】都知事選の勝者と敗者は何を共有すべきか?

民主制を正常に運用するためにはナショナリズムが不可欠

■ナショナリズムが失われた先に

 この種の「国家の必要性」について、日本国民は教育を受けていない。義務教育の中で国家の重要性を理解する機会を持たないため、国家・国境否定のグローバリズムを数十年にわたって無防備に受け入れてしまっている。その結果として、貧困化がひたすら進み、さらには「民主制」を失いつつあるのが現状だ。何しろ、民主制がよって立つところの国民意識(ナショナリズム)が破壊されていっているのである。

 7月5日の東京都知事選挙において、現都知事の小池百合子氏が得票率59.7%と、歴代二位の得票数で勝利した。もっとも、投票率が55%であったため、小池都知事は東京都の全有権者の、わずか33%の得票で当選したことになる。

 だからといって、
「小池都知事は、有権者の三割の票を得たに過ぎないではないか」
 と、敗北した候補者たちが反発しても仕方がない。民主制において、ルールに基づき投票が行われ、多数を得たものが勝者となることは「正統」なのだ(※「正当」ではない)。

 不正選挙が行われたならばともかく、民主的な選挙において最も票を得たものが「政治権力」を握ることを否定してはならない。選挙で敗者となった少数派は、
「今回は負けたが、同じ国民が決めたことだから」
 と、多数派の決定を受け入れる必要がある。いわゆる、敗北宣言だが、敗者側が「負けを認める」ためには、「同じ国民」という意識が不可欠だ。

 実は、ナショナリズムは民主制を適正に運営する上での「基盤」なのである。

 無論、勝者側にしても、最多得票におごらず、少数派となった敗者を称えるべきだ。逆に、敗者となった少数派は、潔く「今回の敗北」は認め、次の機会に向けて多数派を得るための言論活動を展開する。この種の民主制を健全に機能させるための態度、姿勢は、ナショナリズムなしでは絶対に成立しない。
 民主制を正常に運用するためにはナショナリズムが不可欠なのだ。

 そして、グローバリズムはナショナリズムを破壊する。国民を分断し、互いに争わせ、あるいは「外敵」に意識を向かわせ、特定の誰かの利益最大化が実現する政策を進めるのがグローバリズムだ。我々が現状のまま、自民党主導のグローバリズム路線を受け入れ続けた場合、さらに国民の分断が進み、鬱屈した人々が争い、攻撃し合い、日本国の「同じ国民」という意識、ナショナリズムが破壊されていくことになるだろう。

 そのとき、我が国の民主制は維持することが不可能となり、「国民主権国家 日本国」が終焉を迎えることになる。

KEYWORDS:

『自民党の消滅』
三橋貴明 著

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三橋 貴明

みつはし たかあき

経世論研究所

所長

1969年熊本県生まれ。経世論研究所所長。東京都立大学経済学部卒業。2007年、インターネットの公開データの詳細な分析によって、当時好調だった韓国経済の脆弱さを指摘し、大反響を呼ぶ。これが『本当はヤバイ! 韓国経済』(彩図社)として書籍化され、ベストセラーとなる。その後も話題作を発表し続けると同時に、雑誌への寄稿、各種メディアへの出演、全国各地での講演会などで注目を集めている。

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